Column
記事公開日 : 2026/09/29
「時間を守ること」を子どもたちにどう伝えるか。まだ時計を読むことが難しい幼児期には、悩む先生も多いのではないでしょうか。
今回、豊多摩幼稚園様では約1か月にわたり、「トキを育むプロジェクト」の取り組みを実施していただきました。
特徴的だったのは、年少・年中・年長で、子どもたちの年齢や様子に合わせて「時間の見せ方」を変えたことです。
すると、年少さんからは「残りあとちょっとだね!」という声が。年中さんは遊びの終わりを自分でタイマーで確認し、年長さんは時計を見ながら「いまだいたい●分かな、合ってるかな?」と尋ねる姿が見られました。
同じ「時間」でも、その関わり方は年齢によってさまざま。今回の取り組みから見えてきた子どもたちの姿をご紹介します。
豊多摩幼稚園様では、年少・年中・年長で、それぞれ異なる方法で時間を見えるようにしました。
年少さんには、残り時間を視覚的に捉えられるアナログタイマー。年中さんには、遊びの終わりを数字で確認できるデジタルタイマー。そして年長さんの部屋には、分の目盛りも確認できる知育掛け時計を設置しました。
ここで大切なのは、「この年齢ならこの道具」と決めつけることではありません。
豊多摩幼稚園様では、そのときの子どもたちが時間をどのように捉えられるかを考え、それぞれに合った方法で時間を見えるようにしたことがポイントでした。
では、子どもたちはどのような反応を見せたのでしょうか。
年少さんでは、「アナログタイマー:計ってよーめる」を、給食や遊び、朝と帰りの支度などで使いました。
まだ時間の概念が分からない子どもたちもいる中、先生が目にしたのは、
と、楽しそうにタイマーを確認する姿でした。先生からも「興味を持ってくれた」という声が寄せられています。
時計が読めなくても、目に見える変化から「もう少し」「そろそろ」と時間を感じることはできます。
まずは時間を正しく読むことよりも、時間の変化に気づき、興味を持つ。今回の年少さんの様子からは、そんな時間との関わり方が見えてきました。
年中さんでは、「デジタルタイマー:ベンガ君 BIG」を遊び時間に使用しました。
これまでタイマーなどを利用したことはなかったそうですが、遊び時間にタイマーをセットすると、数字が読める子どもたちを中心に、自分で終わり時間を確認するようになったといいます。
「もう終わりだよ」と先生から伝えられるだけでなく、自分でタイマーを見て、残された時間を確かめる。
時間が目に見えることで、子ども自身が「今はどのくらいかな?」と確認するための手がかりになったことがうかがえます。
年長さんの部屋には、「知育掛け時計:よ~める」を設置しました。
先生によると、まだ時計を読むことができない子も多く、時間の管理に使うことは難しそうだったとのことです。
一方で、興味深い姿も見られました。
分の目盛りの数字を確認しながら、
と先生に尋ねる子がいたのです。
「時計を読める・読めない」という結果だけを見ると、まだ難しい段階かもしれません。
しかし、時計を眺め、目盛りを手がかりにしながら、自分で今の時間を読み取ろうとする。そんな時間への興味が生まれていたことも、今回の取り組みで見られた一つの変化です。
豊多摩幼稚園様では、時計やタイマーを置くだけでなく、先生から子どもたちへの声のかけ方にも工夫を取り入れられていました。
たとえば、支度のときに「早くして!お迎えきちゃうよ!」と急かすのではなく、
お片付けでは、「あと5分でお片付け終わってね!」ではなく、
といった具合です。
大人が「早く」「あと○分」と一方的に伝えるのではなく、タイマーや時計を、子ども自身が次の行動を考えるための目印にする。これが豊多摩幼稚園様で取り入れられた「魔法の声掛け」の考え方です。
こうした取り組みを続ける中で、年少さん・年中さんでは、タイマーが「次の行動へのキッカケになっている」と先生は感じていました。
さらに、
という場面も。その結果、先生は「声掛けの回数自体は削減できてきたと感じている」と回答しています。
もちろん、すべての子どもが同じように動けるようになったということではありません。
それでも、先生の言葉だけではなく、目の前にある時間そのものが、子どもにとって次の行動を考えるきっかけになった場面があったことは、今回の取り組みで注目したい変化です。
今回の事例を振り返ると、年少・年中・年長では、それぞれ異なる時間との関わり方が見られました。
年少さんは、タイマーを見ながら「あとちょっと」と時間の変化を感じる。
年中さんは、遊びの終わりを自分で確かめる。
年長さんは、時計の目盛りを手がかりに今の時間を読もうとする。
これは「年少ならこう、年中ならこう」と、すべての子どもに当てはまる発達段階を示すものではありません。あくまで、豊多摩幼稚園様で見られた子どもたちの姿です。
だからこそ、ほかの園で取り組む際にも、まず考えてみたいのは「どの商品を使うか」ではなく、目の前の子どもたちにとって、どんな方法なら時間を感じたり、確かめたりしやすいだろう?ということではないでしょうか。
まだ数字を読むことが難しければ、色や量の変化で残り時間を見せる。数字に興味が出てきたら、自分でタイマーを確認できるようにする。時計に関心を示すようになったら、針や目盛りを一緒に見てみる。
そして、「早くして」と伝える代わりに、子どもと一緒に時間を見る。
今回の実践は、それぞれの園やクラスで「時間の見せ方」を考えるための、一つのヒントになりそうです。
今回の約1か月の取り組みでは、時計を読めるようになったかどうかだけでは捉えきれない、さまざまな子どもたちの姿が見られました。
「残りあとちょっと」と時間を感じること。自分からタイマーを確認すること。時計の目盛りを見て、「今は何分だろう」と考えてみること。
そして、時間が見えることで、先生から声をかけられる前に次の行動へ移る場面もありました。
「トキを育むプロジェクト」が大切にしたいのは、単に時間を守らせることではありません。
時間に気づく。
時間を見てみる。
自分なりに考えてみる。
そして、次の行動につなげていく。
子どもによって、その入り口も歩み方もさまざまです。
だからこそ、その子たちに合った「時間の見せ方」を考えることから、時間との関わりを育む取り組みは始められるのかもしれません。
【取材協力:学校法人菊池学園 豊多摩幼稚園】
https://toyotama-youchien.ed.jp/
昭和6年創立の豊多摩幼稚園は、90年以上の歴史を持つ学校法人です。単学級ならではの環境で一人ひとりを大切にし、教職員が共通の目標のもと温かい指導を展開。人との結びつきを重視した安心の幼児教育を行っています。